フロートレイルの未来像

Asahigaoka Flow Trail

このような格言がある。 “つ く れ ば 、 人 は や っ て く る ”。 

   実際にこの言葉が現実となった。 あるスイス人バイクリゾートプランナーの助けにより、地元のマウンテンバイク愛好家たちが利用されていない夏季のスキー場をマウンテンバイク場として生まれ変わらせたのだ。  

文:クリスチャン・ランド
写真:グレン・クレイドン、中嶋哲平、クリスチャン・ランド
サマーライフ2017の掲載記事

旭ヶ丘スキー場は倶知安町の端に位置する。花園リゾート方面へ向かう、ちょうど倶知安駅の裏手にある。今は使われていないジャンプ台が鎮座するスキー場には1基のみのペアリフトがあり、冬季の一回券は100円。 去年の夏まで、このスキー場がオフシーズンに使用されることはなかった。

倶知安町議会議員の田中義人氏の素晴らしい先見の明のおかげで「フロートレイル」建設が実現し、ニセコ初のマウンテンバイク・ホットスポットが誕生した。週末には様々な年齢層、レベルのマウンテンバイカーたちが集まり、駐車場は満車となる。バイカーたちがトレイルを楽しむ中、家族は麓でピクニック、子供たちは自転車に乗り、それぞれが休日を楽しむことができる。

「フロートレイル」は初心者からプロまで幅広いレベルが楽しめるように設計されている。急斜面をただ直線に滑走するのではなく、でこぼこ道、ジャンプ、ターンをジェットコースターに乗っているかのように体で緩やかな斜面を楽しむ。バイカーたちは必要以上にペダル、ブレーキを使うことなく自分のレベルに合わせてコースを駆け下りる。

特色はコースの一貫性だ。それにより、ライダーがコースの予測をしやすいので、未開発のマウンテンバイクコースのように見えない障害物にぶつかったり、砂利道で滑るリスクが少ない。子供たちと一緒なら初心者用のダートコースや少し上のレベルのコース、ベテランライダーならテクニックを使い早さを楽しむなど、フロートレイルは万人が遊べる。

過去10年間に渡り、地元のマウンテンバイカーたちはトレイル開発のためのネットワーク作りやイベントを夏季のニセコリゾートで開催してきた。全てはマウンテンリゾートの開発のためだ。しかし、山上や山中にあるマウンテンバイクのコースでは、アクセスできるのは上級レベルとなる。加えてコースを目で見ることができないし、マウンテンバイクによる収益も少なかった。

しかし、アレグラ・ツーリズムのサポートによりニセコのマウンテンバイクリゾートとしての道は大きく開かれた。アレグラ社のディレクターであるクラウド・バルシガー氏は5年以内にニセコはアジアのトップマウンテンリゾートしてその名を馳せると確信している。その理由の一つにアジアに競争できるようなリゾート地が他にないことがあると言う。

「アジア市場ではニセコは冬の知名度が高いです。また、マウンテンバイクリゾートとして成長できる場所は他に見られません」とクラウド・バルシガー氏。

「冬のニセコはブランドとして確立しています。だからこそ夏のニセコを売るのも簡単です。より良いビジネス計画があれば5年以内にアジアで最も成功するマウンテンバイクリゾートとなるでしょう。オーストラリア、ニュージランド、北米やアルプス、これらの地域はマウンテンバイク観光を先導しています。しかし、アジアではまだマウンテンバイクリゾートを見かけません」。

トレイル建設に向けてのビジョンが持ち上がったのは、田中義人氏(倶知安町議会議員)が倶知安町の姉妹都市であり、アレグラ・ツーリズムの本社があるスイス・サンモリッツを訪れた後だ。アレグラ社はサンモリッツで3つのフロートレイルを建設し、マウンテンバイク観光計画によってサンモリッツやその他のスキーリゾートを通年リゾート地として成長させた実績がある。

アレグラ社が建設したトレイルを自ら体験した田中氏は直感した。地元のマウンテンバイク愛好家たちの取り組みを高めるにはニセコにフロートレイルの建設が必要だと。アレグラ社はヒラフとアンヌプリにおけるコース計画を立案したが、バルシガー氏が最も興味を持ったのは小さな旭ヶ丘スキー場だった。

「初めて旭ヶ丘スキー場を見たとき、ヨシ(田中義人氏)に言いました。最初のトレイルはここにすべきだ、旭ヶ丘は完璧なロケーションだと」。バルシガー氏は続ける。「カフェとして使える建物は現存していて、大きな駐車場もありました。アクセスもしやすいし、駅も近いです。標高差もあまりないので、トレイルにかかる建設費用も高くなりません。初心者がアクセスしやすいコースで、町からトレイルを見ることができます。他にこれほど素晴らしいロケーションはありません」。

社会・経済的に持続可能なマウンテンバイク地のリゾート開発をしてきたアレグラ社の経験を持って、地元社会が取り組んで来た地域活性・発展が実現する時が来た。

バルシガー氏は他の誰もが見なかった可能性を旭ヶ丘スキー場に見出した。可能性を見出した者はいたかもしれない、しかし行動を起こした者はいなかった。スキー場の麓にカフェを作る計画を始め、旭ヶ丘スキー場でのチャレンジは経済モデルの基礎を示すであろう。

「麓をどう利用するかで価値が問われます。経済効果を狙うにはマウンテンバイカーの活動域に店やレストランがあることが重要です。もし傾斜が5度あるヒラフ頂上までフロートレイルを建設するば、トレイルの長さは14キロになり、並レベルのライダーでも麓まで降りるのに2時間も要します。そうなると、ライダーたちが店やレストランを利用するのは1度か2度くらいとなるでしょう。500メートルの短いコースなら、15分毎に麓まで降りて来ます。そうすれば長距離コースに比べて人々が飲み物や何かその他のものを買う機会が増えます」。

より良い経済効果や様々な人々が楽しめるようにスケートボード施設やジップラインなどを加える案も出ている。マウンテンバイクを目的とした旅行者がニセコを訪れるようになれば、宿泊施設、レストラン、レジャー施設、小売店など経済的な恩恵は計り知れない。冬シーズンが持つニセコの魅力と共に、マウンテンバイク観光による夏シーズンの成長により、ニセコの通年観光地としての成長が期待できる。

マウンテンバイクの8つのファクト

  • マウンテンバイク市場に関する事実
  • マウンテンバイカーの年齢層は幅広い
  • マウンテンバイク市場は購買力を持つ
  • 多くのマウンテンバイカーはスキーやハイキングも楽しむ
  • マウンテンバイカーにとって自然は一番の原動力である
  • くのマウンテンバイク・トレイルは山から離れている
  • 様々な人がマウンテンバイクを楽しむ
  • マウンテンバイクは競技スポーツではない
  • 様々な種類のマウンテンバイグがある

(情報源:アレグラ・ツーリズム)

「冬のニセコはブランドとして確立しています。だからこそ夏のニセコを売るのも簡単です。より良いビジネス計画があれば5年以内にアジアで最も成功するマウンテンバイクリゾートとなるでしょう。」

マウンテンバイク市場の開拓にあたっての最大の狙いは夏季と冬季のそれぞれに違いを持たせること、ニセコに住む人々に年間を通して安定した収入をもたらせることだ。夏季と冬季、両方で成功しているカナダのウィスラーが良い例である。今では夏のウィスラーが冬よりも多忙になったくらいである。

数多くの冬季リゾートが夏季でも成功するようになってきたとバルシガー氏は言う。現在アレグラ社が関わるスイスのレンツァーハイデでは、夏季にも多くの人々がゴンドラを利用する。ゴンドラは冬季には8人のスキーヤーを集客する大きさで、夏季には4人のマウンテンバイカーが乗ることができる。

アレグラ社が関わったプロジェクトで成功したひとつに、イタリア北部にあるリヴィーニョがある。リヴィーニョの10年前のビジネス比率は冬季が93パーセント、夏季がわずか7パーセントだった。しかし、他のリゾートに先駆けて10年前にマウンテンバイク構想を始めた後には比率が冬季70パーセント、夏季30パーセントとなった。2020年までには冬季60パーセント、夏季40パーセントを目指している。

長年ニセコでマウンテンバイクを楽しむ中嶋哲平氏は、ニセコのマウンテンバイク開発に貢献する一人である。また今年の旭ヶ丘トレイル建設の主要メンバー7人の一人でもある。
中嶋氏はウィスラーと比較するのではないが、ニセコもウィスラーのように夏シーズンの成功を収めると信じている。

「数多くの友人がニセコに来ましたが、大半がそれぞれの国へ帰って行きました。なぜなら年間を通して安定した仕事が得られなかったからです。ニセコとウィスラーは比較するには規模が違いすぎます。ウィスラーに比べるとニセコの土地も山も小さいです。また、消費ターゲットとなるクライアントも違います。現時点ではニセコのビジネス比率は冬季が95パーセント、夏季が5パーセントです。最初は冬季70パーセント、夏季30パーセントを目指し、最終的には冬季60パーセント、夏季40パーセントを目標としています。そうすれば年間を通して安定した就業が望めます」と中嶋氏は言う。

これらを成功させるには長い時間と労力が必要だ。中嶋氏がマウンテンバイク市場の開発に関わるようになって今年は10年目となり、旭ヶ丘の成功には目を見張るばかりだと中嶋氏と続ける。

「今では一定して50人、それ以上のマウンテンバイカーが旭ヶ丘に集まっています。ここまで来るのにもっと時間がかかると思いましたが、ニセコのマウンテンバイク業界は有望です」。

ニセコには異なる4つのリゾートがある。それぞれが違う特色を持つマウンテンバイクコースを作り、全てを繋げたら素晴らしいコースになるとバルシガー氏は言う。「ニセコは次の10年間で家族向け、初心者コースを作ることに焦点を当てるべきです。500メートルほどの簡易で短いコースを4から8つ作り、全てを繋げることで一つの簡単なバイクパスができます。様々な人々がトレイルを楽しみ、多くの人々が倶知安町を訪れることになるでしょう」。

Asahigaoka Flow Trail