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ニセコ町:環境に対する先鋭的な取り組み

By 29th November 2019

ニセコ山麓に降る雪や小川を源泉とした無垢な水源、この上なく「美味しい」空気、そして芳醇な土壌――これらはニセコ山麓の一大産業である農業を象る上で、大切な要素だ。ただ、本誌読者にとって「自然由来」で最も大切なもの、それはいわずとしれた「パウダースノー」であろう。

ニセコにおける確たる産業――農業と観光――は、当地由来の自然環境があるからこそである。それに呼応するかのように、ニセコ町は行政としての環境政策に力を入れており、内閣府が制定する「環境モデル都市」の一都市に選定されている。ニセコ町長の片山健也さんは、町と環境の関係をこのように説明する。

「自然環境の恩恵を余すことなく受けることにより、成立しているニセコ。それだからこそ、環境に対する長期的配慮は不可欠であると考えます」

ニセコ町は2050年までに二酸化炭素排出量を2015年レベルで86%削減するという目標を掲げた。2015年に政府が2030年までに二酸化炭素排出量を2013年レベルで26%削減するという目標と比較すると、この目標は非常に先鋭的なことがわかる。

2019年には「第二次環境モデル都市アクションプラン」が制定された。これは国連が制定した「SDGs」の方針と呼応するもので、本アクションプランでは社会、経済、環境といった三つの軸で形成されている。

この一連の流れの前段として取り組みがニセコ町・町民センターの改装だ。1975年に竣工した本建物は2011年に改装されたが、ニセコ町の環境への取り組みを具現化したものだ。この改装では地中熱ヒートポンプや断熱効果を高めた施工を行い、二酸化炭素排出量の削減を意識した建築設備を取り込んだ。その結果、2010年比で2012年の本センターの光熱費が約50%近く削減され、改装後の来場者も約60%増加。夏は涼しい環境を提供していることから、今では町民の「賑わいの場」として、常に人を集めている。

この町民センターでの経験を元にした、さらなる取り組みを――それがニセコ町役場の新庁舎工事だ。延床面積は築50年を超える現庁舎のほぼ倍となるが、断熱に力を入れた建築であるため、エネルギー関連のコストは現庁舎と比較して半減される見込みとなる。また同時に、NISEKO生活・モデル地区事業という、環境を軸とした新たな住生活空間の整備を町が計画している。9ヘクタールを成す本事業のフェーズ1の完成は2023年度を予定している。

ニセコ町としての次なる取り組み、それはニセコを環境リゾートとしての価値を持続的に高めていくためにも、観光事業の低炭素化を促進する対策を講じていくことだ。現在は全体排出量の40%を成す本事業、その対策の財源として、宿泊税の導入を検討している。ニセコ町の環境に対する試みを、さらに推進していく軸の一つとなる見込みだ。

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