カー団地: 極上の車中生活

By 29th November 2019 Japanese, Powderlife Magazine 2020 JP

新雪に魅入られた スノーボーダーたちは、 好みにカスタマイズした 4WD車に寝泊りし、 毎冬をこの地で過ごす。

車の外は-15℃、ついでに言うと、車内も-15℃だ。エンジンもヒーターもつけていない、北海道の奥地の道路わきに駐車した古い国産バンは、まるで冷凍室のよう。唯一の熱源は、厳寒地仕様の寝袋にくるんだ体だけ。グランピングとは程遠い。しかし、山に登っては滑ることを繰り返すため、簡単なカスタマイズを施した4WDのバンで毎年数週間から数カ月も暮らす筋金入りの日本人スノーボーダーたちにとっては、これこそパウダーライフの極致だ。

2000年代初頭、北海道に長く暮らしながら、スノーボードムービーを製作したニール・ハートマンは、この遊牧民のように暮らす人々の集う場を、日本式の集合住宅である『団地』になぞらえ、『カー団地』と名付けた。パウダースノーのディズニーランドとも呼ばれるニセコの、最高のバージンスノーに向かう純粋な情熱に駆られ、厳冬の北海道で車中に寝泊まりするスノーボーダーは毎冬、何十人、何百人と現れる。

「私たちが道路地図を見て、北海道がどれだけ大きく、未開拓であるかに気付いたのは、2000年代初めのことだった」と、ハートマンは振り返る。「実際にインスピレーションを与えてくれたのは、長野県から来た人たちだった。私たちは地元で暮らしながら日帰りで滑っていたが、彼らは丸1カ月間も車内で寝泊りし、料理もすべて車内でやっていた。地元に暮らす私たちより、彼らの方がニセコを遊びつくしていた。私たちも同じことをして移動すれば、北海道の可能性がさらに広がると感じ始めた」。

カー団地での生活を多少は楽にしているのが、北海道の奥地でも享受できる現代日本の利便性である。どこにいても、少し車を走らせて街に行けばコンビニや公共浴場がある。スペースと暖房さえあきらめれば、宿泊代を払う必要はない。ハートマンによると、カー団地の住人の中には、自動販売機からこっそり電気を盗んでいる輩もいるそうだ。自動販売機といえば、冷凍庫のような車中で夜を過ごした翌朝に飲む暖かい缶コーヒーは、砂漠のオアシス並みにうれしいことだろう。

ややカルトじみたカー団地信者の集団は、ハートマンのスノーボードムービーカー団地』シリーズから生まれた。今では伝説となったエキセントリックな日本人スノーボーダーたちの旅を14年間にわたり、計10本の作品で追ったものだ。最初のクルーの何人かは、スポンサーが支配する商業的なハーフパイプ競技の束縛から逃れ、雪に閉ざされた北のフロンティアへと、本州からやって来たプロたちだった。

その中には、作品では『オレンジマン』と呼ばれ、世界中で知られるようになったヨガ探求者のヤマさん(山内一志)、彼の親友で、雪を食うサメのデザインのスノーボードで有名になったシャークボーイこと土井隼人さん、その他6人のソウルカービング・スノーサーファーがいる。当時のクルーたちは、今でも北海道内外の各地で山々を滑走している。新しい家族と生活のため、以前のようにはいかないが、それでも定期的にニセコを訪れ、滑っているようだ。近くの駐車場で、ヤマさんの明るいオレンジ色のバンを探してみるといい。

「カー団地10」やその他の地元のスノーボードムービーは、地元スノーサーファーの殿堂であるゲンテンスティックショールームで見つけることができる。

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